木の持つちから

                 白菊の 枕の近く 香る夜は 
                  夢も幾夜の 秋を経ぬらん

                             蓮月尼


 尼僧らしい柔らかい詩 いつもこの時期の菊の香りで思い出します
 キリッと冷たい朝の空気に香る菊の花は通り過ぎてもまだ鼻に残る


 晩秋から冬支度へと向かうこの季節のテーマカラーを赤茶にしました。気温がどんどんと低くなるこの時期に山の色は茶や黄、赤と錦色に染まります。どこか温かい、それでいて侘しいこの時期がなんとも好きです。

 今年の新規外構造園工事は終了し、今は年間管理の剪定作業で各お宅周りです。剪定作業で廻るお客様は、庭蝉の造園した庭もありますが、半分以上が庭蝉が作ったお庭ではなく、どこぞの植木屋さんの後を引き継いで庭蝉がやらせていただいております。しかしどの植木屋も枝の残し方が違うことが多く、初回の剪定工事は切り変えていく作業が大変です。枝があちこち暴れてしまっている木、花が付かない木、その木本来の樹形を壊されてしまっている木。。。可哀想だな、と思ってしまいます。枝を落とすこと自体が木にとっては本来よくないことなわけですが、その作業によって人が「キレイ」とか「やっぱり植物はいいね」と思ってくれる。それだけで木々は少し元気になります。嘘のような話ですが、私自身、常に現場でそれを目の当たりにしています。ですから剪定の技術は大事なのです。5〜6年の切り替え作業で徐々に良い枝が伸びてきた時の嬉しさ、いつもその木に感謝でいっぱいになります。


 菊の香り残る晩秋の庭の中 言葉を忘れひとりで木々と会話できる年末剪定は結構大事な時間です

                                  剪定作業も立派な造園 

                                  木との会話で育まれる

                                  最高のデザインなんだ

7年越しで育てた柔らかいモミジの枝葉は
時に優しく微笑んでいるように見えるのだ

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