結実しない八重のヤマブキ

 先週から千葉県最南の館山市での造園工事をしております。

 京葉道路を南下、あるいは北上するにあたり、左右には千葉の植生が感じられるイキイキとした小山たちが今の春を楽しんでいるように思えます。市原あたりでは落葉樹のなかにヤマサクラも混じり柔らかい淡い色。館山に近づくにつれて常緑のモコモコとした山が多くなり、枇杷畑もチラホラ見えます。高速道路の側道の植栽にはレンギョウやヤマブキが黄色の鮮やかな光を放っています。距離が遠いのでその分身体の疲労は溜まりますが、行き帰りのこの景色にはいつも助けられています。


 そして今日は久々に身体を休めゆったりとしたお茶のお稽古に参加できました

 先生が生けてくださった花は一重シロヤマブキ。それに因んでヤマブキに関する戦国武将 太田道灌の話をお聞きしました。
とても面白い内容だったので帰宅しすぐに調べてみると以下のような内容でしたのでそのまま抜粋してみました。

ある日、鷹狩りに出た太田道灌──、不意な雨にあってしまい、とあるみすぼらしい家にかけこんだ。その家の者に「蓑(みの)を貸してもらえぬか」と声をかけたが、出てきた少女は黙って山吹の花枝を差すだけ。意味が分からぬ道灌は腹を立て、雨の中を帰って行った・・・。その晩、道灌は近臣にこの話をした。すると、一人が後拾遺集にこんな和歌があると云うではないか。

   【七重八重花は咲けども山吹の(実)みのひとつだになきぞかなしき】

すると少女は、「お貸ししたくとも蓑ひとつなくて申し訳ない」と山吹にたとえて花を差し出したのか──道灌は己の不明を恥じ、その後、歌の道に精進するようになったそうである。

一重のヤマブキは結実して実をつけるが、八重のヤマブキは雄しべ雌しべが花びらに変化したものなので結実しない。実のつかない八重ヤマブキに例えた上品なやり取りに感動してしまいました。


千葉市近郊の森の中はまだ明るく春の霞がかった空を仰いで今まで通りの心地良さと同時に大気汚染へのもの恐ろしさを感じてしまい、かなしきかな ただただ自然が素晴らしいと思える世界はそこにはない気がする。
排気ガスを出しながら走り続ける車の中で、ヤマブキのキレイな黄色に感動している自分に罪の意識を感じざるを得ません。

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