「市左エ門の庭」完成

 皆様お変わりはありませんか?

 私自身は身体の不調から脱却すべくアクセクしている内に、新たな道が拓けて来た兆しを感じ、走り始めて一年が経ちました。Instagramでは度々更新していたものの、こちらのホームではなかなか更新できず申し訳ありませんでした。。「西田が人が変わってしまった」「もう植木屋ではなくなった」など情報が錯綜している様ですのでざっくりと近況を羅列します。

 まず昨年2月に京都芸術大学建築デザインコースに3年次編入をして建築を勉強し始めました。(庭蝉住研究所の一環として)課題や試験は過酷ではありますが、楽しさが勝っている。走り始めて良かったと心から去年の自分に感謝しています。

 次に4月末に所属していた蘇我比咩神社の粟飯原宮司が急逝し、それを引き継ぐ形として6月に千葉市中央区に座します蘇我比咩神社の宮司職の任命を授かりました。引き継ぎは混迷を極めましたが、なんとか10月の例大祭を全うし、家族や仲間の協力もあり正月繁忙期も乗り越え、ようやく宮司らしい立ち振る舞いができて来た様に思います。

 また、上記二つの新しい変化により、元々多忙だった造園業は業態を変えざるを得ませんでしたので、向こう3年は造園工事は一切請けずに年間管理のお客様にのみ剪定や消毒管理を続けさせて頂く事になりました。とは言え、、そうも言ってられず、造園もコソコソとしているのが現状です。元々の進んでいたプロジェクトもありますし、やってあげたい気持ちが庭蝉を支えた要素の一つでもあるので。

 という事で、建築リフォームの構想段階から2年経ちようやく完成した庭を公開します。

 兵庫県芦屋市 「市左エ門の庭」

この芦屋の地に300年以上前より代々住んでいた市左エ門家は江戸時代より続くこの母屋(推定築年数200〜250年)を幾度となく治し続け使って来た歴史がある。阪神大震災の時には周りが建て替えを余儀なくされたが、市左エ門家は何とか治して母屋を残しました。今回、江戸の天保9年より実に4回目の改修工事が竣工します。私はこの庭に散っていた石や樹木を整理し、再構築し、市左エ門家の想いに少しでも多く触れたいと思いました。邪魔にも思える松の大きな腕木は結界として利用する事で庭に馴染ませる。既存の蹲踞を活かし点景とする。「掘ったら出てきた石垣は大阪城石垣の残りものの可能性がある。」とご近所さんに言われ、昂った。また、建物の改修工事のデザインにも多分に口を出しました。それは、ただの「古民家」ではないと言いたかったのです。古民家はそのままを保管(保存)している事に意義がある様なところがあります。しかしこの古民家は芦屋の高級住宅地の真ん中で何度となく改修を続け、増築、改築と時代にあう暮らし方をして来ています。大事なのは使い続けること。保管されれば良いという事ではないと思いました。それは神宿る太い柱に寄り添い守られ、その生活を営み続ける事を大事にした結果だと思うのです。だから今のニーズに合ったデザインも必要で、これからの時代、庭と建築との融和をもっと強めていくことが重要だと庭蝉住研究所は考えます。

 また話は少し脱線しますが、日頃より思うところ、建築や庭園に勝手に名前を名付けてしまう建築家や造園家が多い。それは時に設計者のエゴでしかないことが多いのも事実です。難しい言葉を並べてインテリジェンスを纏ってはいけないと思う。ですから私はいつも施工例のタイトルには「〇〇邸の庭」としか謳わない。自身の「作品」であるとは思わない。お施主様あっての造家、造園です。名前や使い方はお施主様が決めることだから、出しゃばってはいけない気がするのです。また、いろんな職人とのセッションの中で対話を重ねる事により産まれるモノを大事にしている事もあります。しかし今回庭蝉始まって以来、作庭例として初めて「市左エ門の庭」と名付けた。それは途絶えてしまった市左エ門本家の想いを、この想いだけは、継続し続ける事に意義があるはずだと考えたからです。松の太い腕木の力強さを感じながら、代々続いた連綿とした使命感を感じたのです。ですから、この庭もまた「私の作品」ではなく、市左エ門が私に作らせた庭と言えます。私たちはただ身体を使って行動したに過ぎないのです。昼も夜もどんちゃん騒ぎながら市左エ門に寄り添った日々に感謝しています。

庭に面した個室にはウッドデッキと同じ素材を床に使った

北にそびえる六甲の山をイメージした景石

松の腕木は結界として見せる

庭蝉の得意とする曲線デッキが松の腕木に向かい合う

掘ったら出て来た石垣を使い流れを作る

やはり。。。造園も建築も神様も、庭蝉住研究所には全て不可欠な要素なのだ。。。

Instagram : niwasemi_gardens   詳しい動画や経過などはInstagramに載せています

YouTube : niwasemi ju laboratory 庭蝉住研究所  

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